とんでもない臨場感。よくこんな映画撮れたな「ブラックホークダウン」

2001年製作/145分/アメリカ
監督:リドリー・スコット 主演:ジョシュ・ハートネット
BLENDA:4.4 Yahoo!映画:4.0 映画.com:3.8
ライター:S・Y

第74回 アカデミー賞(2002年)に4部門ノミネートされながら、編集賞だけの受賞にとどまったのは残念としか言いようがない。監督賞、撮影賞は受賞するべきだと思う。(同年の撮影賞はロードオブザリングだったので、うーんきっと僅差で負けてしまったのでしょう…)
1993年にソマリアのモガディシュで発生した米軍主導による軍事作戦を「グラディエーター」の巨匠リドリー・スコットが実話に基き半端ない臨場感で描き出す。ソマリアは1991年1月に反政府勢力統一ソマリ会議(USC)が首都を制圧し、内戦が激化。1992年12月、国連の国連安保理はアメリカ軍を中心とする多国籍軍を派遣。アイディード将軍は国連に対して宣戦布告し、国連パキスタン軍を攻撃して24名の兵士を殺害した。これに対し、国連安保理はアイディード派幹部拘束を目的とした作戦を実施。これが1993年10月3日・4日に起きた「モガディシュの戦闘」であり、この映画の元となっている。(この内戦の激化の入り口のタイミングでソマリアの韓国大使館から決死の脱出を測ったのが「モガディシュ 脱出までの14日間」。)
「ブラックホーク・ダウン」自体は2001年公開の映画で、個人的にも随分前に一度見ていたが、今回「モガディシュ 脱出までの14日間」をきっかけに、改めてソマリアの内戦について見直したいと思ったことがきっかけで、改めて見ることに。いや、ソマリア、まじでやばい。
アフリカの内戦ってソマリアだけじゃないけど、子供も笑いながら銃を撃ったり、民兵が銃を持って歌い踊って殺戮を楽しんでいる描写が多い。乾いた空、砂ぼこり、立ちのぼる黒煙、乾いた銃声。


「ブラックホーク・ダウン」は、アメリカ制作なので米軍の目線で描かれているため、民兵の描写が少なくアフリカのやばさは他の映画ほど伝わっては来ない。米軍の「誰一人残さない」「絶対に見捨てない」「仲間のために戦う」が描かれている。

正直、登場人物も多いし、みんな同じ格好なので、戦場に出ると特に誰が誰だかまったくわからない。主人公のジョシュ・ハートネットと、ユアン・マクレガーはさすがにわかったけど、それ以外は途中で聴力を失うネルソンが特徴的な顔&いい味出してるキャラクターだったので覚えられたけど、もう他は全然わからなかった…。監督もそれを懸念して、実際はそんなことしないらしいけど、映画の中ではヘルメットに名前が入っているんだって。後からその記事を見るまで全然気づかなかった、、名前書いてあってもそれどころじゃないシーンばかりなので、あまり意味なかったみたい。


見終わってすぐに最初の方のシーンを見直して、やっといろいろと繋がった。あーこれがこの人か、的な。なので本当は5回くらい見ればもうちょっと深く理解できそう。

実際にブラックホーク機が墜落するシーンで、「ブラックホークダウン、ブラックホークダウン」と司令室?で無線ぽい声が繰り返されるんだけど、最初に見た時の記憶ではもっと緊迫感があってシーンと静まり返ってたイメージだったんだよね、でも改めて見たらそうでもなかった。勝手に私が作ったイメージだったのか。
見ていて気づかなかったけど、18歳新人のブラックバーンをなんと、オーランド・ブルームが演じてます。全然彼らしくないイキがっている若者役で。
そんな中でも、一番好きなシーンは、今までコーヒーを淹れることが仕事だったデスク担当のユアン・マクレガーが急遽、戦場に出ることになり、唯一笑顔が見れたこのシーン。戦闘の真っ只中で一時的に逃げ込んだ建物にあったコーヒーメーカーで、まさかのコーヒー挿れてたんだよね。で、デルタ隊員のサンダーソン軍曹(多分)にコーヒーどうぞって。サンダーソン軍曹(多分)も思わず笑顔で、「お前、所属は?」「基地のデスク」、サンダーソンの笑い声、「本当さ、ジョークじゃない」。
これは二人ともいい笑顔だったな。


一方で、1箇所とても残忍な描写があった。おそらく事実はきっともっと残忍だったと思う、さすがに映像にしなかったのだと思うが、2機目のブラックホークが墜落した後、本人の志願によりデルタフォースのランディ・シュガートとゲーリー・ゴードンが墜落した機内に残された仲間を救うため、押し寄せる暴徒化した群衆にたった二人で立ち向かい、命を落とすシーン。怖いのはその後。もう絶命しているのに、人々の悪意によって弄ばれてしまう。これって、文字にもしたくないほど残虐な行為だと思う。この程度の映像にしていたけど、きっと実際は、、、と考えると頭がおかしくなりそう。この二人は死後にベトナム戦争以降初の名誉勲章が授与されたそう。


この2機目のパイロットのマイク・デュラントは、この二人によって身動きが取れなかった機内から外に出してもらい、足を負傷して動けないため建物の影に隠してもらっていたけれど、二人の絶命後すぐに見つかり捕虜として捕まってしまう。でも11日目に解放されたらしい。


助けが来た時にはすでに連れ去れらた後で、デュラントのヘルメットだけが残されていて、連れて行かれたと理解した米軍は、ヘリからスピーカーでどこかで聞いているかもしれない本人に向けて、「マイク・デュラント、我々は君を絶対に見捨てない」とメッセージを何度も送る。
とにかくずっと、ずっと壮絶な戦闘シーンが続き、負傷者がどんどん増えていく。当然、負傷の仕方もえぐいシーンが多い。そういうのが苦手が方は見ない方がいい。これを地上波でやったことにちょっと驚き。
10月3日の午後15時に開始した作戦は、翌10月4日に国連部隊が救援に向かい、ようやく命からがら国連軍が拠点としているパキスタンの基地に辿り着く。
それでもまだ、揃わない仲間を探しに再度戦場に戻っていくデルタ隊員のフート。

何のために戦うのか?仲間のために戦う。それだけだ。
結局、この作戦で、アメリカ兵18名、マレーシア兵1名が犠牲となった。捕虜となったデュラントが解放された後、作戦から2週間後にアメリカ兵は撤退した。今もなお、ソマリアの内戦は収束していない。



実話だから、ストーリーが面白く脚色されているわけではない。とにかくこんな史実があったんだという事実を知りたいという点と、よくこんな映像撮れたなという圧巻の臨場感を見る価値はとてもある。
ただ、最後までずっと緊張するしとてもパワーがいるので、体調がいい時に見るべし。
※ちなみに、実際にこの作戦に参加した隊員が何人かカメオ出演しているんだって。「ディトマソ」と無線で呼ばれるチョーク班長、墜落現場へ急行するMH-6 リトルバード「スター41」のパイロット、再び出撃するストルッカー軍曹の車両隊に飛び乗る眼鏡をかけた隊員、ラストのスタジアムでコーヒーを手渡した隊員がそうらしい。覚えているうちにもう1回見ようかな。
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